反緊縮・減税で平和で豊かな日本へ

2019年07月


講談社のゲンダイビジネスに週刊現代記者小川匡則氏のMMTに関する論説が掲載されました。MMTについては、多くの記者が中身を良く吟味することなく否定的なコメントを掲載することが多い中、MMTについて、本質的な論点を明示した上で、その可能性について記している点で注目されます。下記タイトルをクリックすると、原文にリンクします。
勝手ながら、以下に転載させて頂きます。
現代ビジネス小川匡則:MMT(現代貨幣理論)が、日本経済を「大復活」させるかもしれない

アメリカの次期大統領選で民主党の最有力候補と目されているバーニー・サンダース上院議員は、進歩的な経済政策で若者を中心に支持を拡大したことは記憶に新しい。そんなサンダースの経済政策の支柱となっているのがMMT(現代貨幣理論)。いまこの新しい経済政策が世界的な大注目を集めている。

そんなMMT論者で、サンダースの経済政策顧問を務める経済学者のステファニー・ケルトン氏がこのほど来日。経済に対する価値観を180度転換させるこの理論は、「日本経済を救う可能性に満ちている」と語るのだ。

「経済の見方」がガラリと変わる

MMT(現代貨幣理論)が問いかけるのは「単純な経済政策論」ではない。MMTは経済に対する見方や価値観の大胆な転換を求める経済理論だ。

−−たとえば、税金とは何のためにあるのか。

従来からの常識は「税金=予算の財源」である。しかし、MMTは税金を財源確保のためとは捉えない。そのことを理解するには経済の仕組みを改めて理解し直す必要があるという。

ケルトンは講演の冒頭、ある物語を語り始めた。経済学者のウォーレン・モスラーから聞いた話で、彼女はそれ以来お金に関して従来とは「異なる概念」を持つようになったという。

「ウォーレンには2人の子供がいました。そして彼らに対して『家事を手伝いなさい。手伝ったら、報酬として私の名刺をあげよう』と言いました。例えば皿洗いをしたら3枚、芝刈りをしたら20枚、といった具合に内容に応じて名刺を渡します。

しかし、数週間経っても子供たちは手伝いを全くやらなかった。ウォーレンが『どうしたんだ?お金を払うと言っているんだぞ』と言うと、『パパの名刺なんかいらないよ』と返されてしまった。そこでウォーレンはあることを思い立ちました。そして、『この美しい庭園のある家に住み続けたいのであれば、月末に名刺30枚を自分に提出せよ』と義務化したんです」

すると、子供たちはそこから急激に手伝いをするようになった。

いったい、なぜか。

政府のための税収」ではない

ケルトンが続ける。

「なぜなら名刺を集めないと自分たちが生きていけないことを認識したからです。そこでウォーレンは気づきました。『近代的な貨幣制度ってこういうことなんだ』と。つまり、もし彼が子供に国家における税金と同じものを強要できるのであれば、この何の価値もない名刺に価値をもたらすことができる。そして、彼らはその名刺を稼ごうと努力するようになるのです。

もちろん、ウォーレンは名刺を好きなだけ印刷することができる。しかし、子供達が来月も手伝うために名刺を回収すること(=提出を義務づけること)が必要だったんです」

これこそが「信用貨幣論」。つまり、お金は限られた量が回っているのではなく、信用によって増やせる。そして、その貨幣の信用を担保するものこそが「税金」というわけだ。

この物語から得られる教訓としてケルトンは、「ウォーレンは名刺を回収する(課税する)前に、まずは名刺(お金)を使わなくてはならない。つまり、課税の前に支出が先に来なくてはならないのです」と語るのだ。

そのことを政府に置き換えるとどういうことになるのか。ケルトンは続ける。

「政府は税収の為に税を課し、それで財政支出をするのではないということです。まずは政府が支出することが先です。その支出される円を発行できるのは政府です。政府は好きなだけお金を発行でき、財政的に縛られることはありません」

つまり、国民から集めた税金が執行する予算の「財源」になるわけでは「ない」のである。政府は国債を発行することで、事実上の貨幣を発行し、それが財源となる。それでも国民が税金を支払うのは「納税の義務があるから」であり、後述するように「インフレの調整機能を果たすため」である。

もちろん無条件に国債を発行しまくっていいというわけではない。制約となるのは「インフレ」である。

インフレもデフレも防ぐ

ケルトンはこう説明する。

「政府にとって財政が制約になるわけではない。何が制約になるかというと『インフレ』です。インフレは最も注目すべきリスクです。貨幣量は使えるリソースによって供給量が決まります。もし支出が需要を上回ればインフレになる。それはまさに気にするべき正当な制約なのです」

「インフレをどうやって防ぐか」、というのは同時に「デフレをどう防ぐか」を考えることでもある。つまり、経済とは「インフレもデフレも過度にならないちょうどいい状態を維持させるための調整を行うことである」というのがMMTの柱である。

ここでケルトンは一つの図を示した。

economy1

「経済」は洗面台のシンクに例えることができる。シンクに溜まっている水が「お金」である。これは水が多くてシンクから溢れている状態だ。

ケルトンは言う。

「水が溢れているのは、インフレの状態です。税金はその水を減らすためのものなのです。税金の目的は所得を誰かから奪うことです。なぜ、支出能力を減らすのか。それはインフレを規制したいからです。つまり、徴税というのは政府支出の財源を見つけるためではなく、経済から支出能力を取り除くためのものです」

つまり、税金とはインフレを抑制するための調整機能として大きな役割があるのであって、予算の財源ではないのだ。

ケルトンによれば、インフレを抑制する手段は他にもある。その一例として「規制緩和」を挙げた。

「例えば石油ショックで石油価格が高騰した際、規制を緩和し、天然ガスを使うようになった。その結果、石油価格も下がった」

政府は適切なインフレ率を維持するために、インフレが過度になりそうであれば「増税」、「規制緩和」などの政策を駆使するべきだということだ。

日本政府は「目標設定」からして間違っている

次にこの図を見て頂きたい。

economy1

これはさきほどと打って変わって、シンクの水が少ない状態だ。

つまり景気が悪い状態であり、まさに今の日本である。ではどうすれば水を貯められるのか。当然ながら、政府が国債を発行して支出をする(水をたくさん出す)ことと、減税する(出ていく水を減らす)ことである。

しかし、いま政府がやろうとしているのが、「消費増税」である。

これについてケルトンは「現在インフレの問題を抱えていない日本のような国が消費増税するということは経済的な意味をなしていない。予算の財源を得ようとしているからです。適切な政策目的にはなり得ない」と断じている。

では、政府がやるべきことは何なのか。ケルトンはこう主張する。
経済のバランスをとることです。予算を均衡することではなく、支出と税金を調整することによって、『シンクの水が完全雇用になっても溢れ出ない』、『インフレをきたさない』という状況にコントロールすることです」

現在、日本政府は「PB黒字化」、「財政均衡」、「財政再建」などといった目標を掲げて経済政策を立案している。しかし、ケルトンはそうした目標設定自体が間違っていると指摘する。

「MMTは特定の予算支出を目標とすることはないし、政府赤字を何%にするといった目標設定もしない。適切な政策目標は『健全な経済を維持する』ということです。あくまで経済のバランスをとることが重要です。つまり、予算の均衡ではなく、経済の均衡です。

財政赤字とは「単なる手段」

MMTの話題になると、必ず「ハイパーインフレになるリスクがある」といったステレオタイプな批判が出るが、むしろそのインフレ率の調整にこそ注力するのがMMTなのである。

だからこそいま日本人が考えるべきは、経済状況や社会状況を踏まえた上で「インフレの要因」を分析することだろう。

例えば、国債を財源として教育無償化を実現するとしよう。それで果たしてインフレ要因になるだろうか。タダで教育を受けられ、教員をはじめとしてそこで働く人たちに仕事を与えることができる。それでいて何かの価格高騰を招くのだろうか。

一方、公共工事を一気に極端に増やした場合には人手不足、資材不足などで工事費が大幅に上がり、一時的にインフレ圧力を招くかもしれない。では、どの程度の投資であれば適切なインフレ率に収まるのか。大切なことはそうした分析をして、適切な政府支出額を決めていくことである。

「財政再建」の旗印のもとで、いつも目の敵にされる「財政赤字」だが、そもそもこれを悪いものと決めつけていいのだろうか。


ケルトンは次のグラフを示して問いかける。

financial balance

「それは政府側からの見方でしかありません。我々民間の側からバランスシートを見ましょう。すると、政府の赤字と同じだけが民間の黒字となります」

このグラフから明らかなように、重要なことは、「政府の赤字は非政府にとっての黒字である」という事実なのである。

ケルトンは財政赤字を経済状態の指標とすることに異議を唱える。


「政府の赤字は悪でも脅威でもなく、財務のミスマネジメントの証拠となるものでもない。そういう見方ではなく、政府の赤字は単なる手段なのです」

赤字国債が膨らみ続けて政府が破綻することはない。自国通貨建てであるからだ。

それゆえにMMTはユーロ加盟国でユーロを使っている国々には通用しない。国債発行額の制約となるのはあくまで「インフレ率」なのである。

消費増税などしている場合ではない

ここまで見てきたようにMMTの論理は非常に興味深い。

しかし、そんなMMTへの反論といえば「いかがわしい」「そんなうまい話があるわけない」といった非論理的なものばかりだ。唯一具体的な反論が「インフレ基調になった時、それを止められない」というものだが、それならば過度なインフレには絶対にならないという範囲で計画的に導入してみてはどうだろうか。

そもそも20年以上のデフレに苦しむ日本である。

例えば消費税を廃止して、足りない税収20兆円を全て国債で賄うとする。それで果たしてどの程度のインフレとなるのか分析してみて、インフレ率が過度にならない試算であれば実行してみるというのでもダメなのだろうか。それだけでも日本経済を大きく好転させられるのではないか。

MMTの重要な示唆は、景気を好転させるための第一歩として「赤字国債をあえて増やして国民生活を向上させる政策」を実行すべきだということだ。

MMTは言説のブームではない。出口の見えない不況。希望の見えない日本経済に大きなヒントを与えてくれていると捉え、最重要テーマとして国会で議論を始めるべきではないだろうか。

山本太郎 羽鳥慎一モーニングショー「そもそも総研」出演
 テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」に、山本太郎氏が出演し、「れいわ新選組」の政策について語りました。見落とされた方も多いと思います。YOUTUBEに何本かアップされましたので、以下に紹介させて頂きます。exciteニュースが簡潔に内容を紹介しており、勝手ながら以下に転載させて頂きます。下記タイトルをクリックすると原文にリンクします。
ニュース 国内 社会 山本太郎氏、『モーニングショー』出演で「見直した」の声 称賛された“30秒まとめ”の内容は 山本太郎氏、『モーニングショー』出演で「見直した」の声 称賛された“30秒まとめ”の内容は

「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)に、政治家の山本太郎氏が出演し、「れいわ新選組」の政策について語り、反響を呼んでいる。

 25日の放送では、玉川徹氏のコーナー「そもそも総研」にて、「れいわ新選組山本太郎代表は何がしたいのか?」というテーマで緊急特集を組んだ。

 れいわ新選組は、参議院選挙の比例区で2議席を獲得し、その得票率は4.55%と、約20人に1人が投票した計算。2議席は「特定枠」を使った舩後靖彦氏と木村英子氏のものとなり、山本氏自体は国会議員ではなくなったが、「今後、党勢を拡大し、最終的には政権を狙いにいく」と述べた。玉川氏が「政権を狙うということは、(党の)代表ですから、総理大臣を目指すと?」と問うと、「申し訳ないですけど、そういうことになります」と総理を目指すことを断言。「本気じゃなければ旗上げしない」と言い、次回の衆議院選挙にも出るという。

 今回の特集では、れいわ新選組の公約に沿って説明が行われた。「消費税の廃止」については、「税の滞納の6割は消費税。10%になれば、首が締まっている今の状態から首をくくらなきゃいけなくなる」と説明。山本氏は「勝手にフリップ作ってきたんですけど、いいですか」と消費税が3%になった時の消費の落ち込みや、「生活が苦しい」と感じている人の割合が6割弱、貯蓄ゼロの割合が20代で6割以上、30~50代でも4割を超えていることなど、具体的なデータを持ち出し、「20年以上デフレ(物価下落)が続いて、国が衰退していってるのは日本だけ」だと危機感を表明した。国の借金を増やした理由に言及し、消費税以外で国の財源を確保する手段も述べた。
この説明を聞いた高木美保の「れいわ新選組に投票したのは若い(新しい)力を感じた人たち。一方で、自民党に投票した人たちは、今満足ではないけれども、安定していて、とりあえずそこそこ生活が出来ているから、冒険しないでやってくれるのは与党じゃないか(と思って投票したのでは)」と両党投票者の対照性と、“現状維持”を求める声を述べた。しかし、山本氏は「現状維持になっていないことに、気付かないといけない」と断言した。

また、今回議席を獲得した舩後氏はALS(筋萎縮性側索硬化症)患者、木村氏は脳性まひ患者という特徴的な要素がある。「今の世の中は、生産性で人が測られるような部分がある。自殺者も多い。これが加速すると、命の期限が出てくるのではないか」「これから高齢化社会は進み、寝たきりの人も増えてくる。私は“寝たきり界のトップランナー”に(国会に)入っていただいて、寝たきりになっても豊かに生きていける、命の期限を設けない、生産性で測らせないという形に国会論戦をしていって頂きたい」と語った。

 コーナー最後にも、「あと30秒しかないです」と言われ、きっちりとこれまでのまとめや主張を述べ、締まりのある終わり方となり、視聴者からは「山本さんの説明、とても分かりやすかった。見直した」「少なくとも興味をもったよ」「玉川さんが控えめになって山本さんに喋らせてくれてた。ナイスアシスト」「参院選前なら良かったのに。こうやってじっくりと政策を聞ける機会がもっとあっていいはず」といった称賛の声が相次いだ。

 しかしその一方で、「詐欺師みたいに話が上手いだけ」「ヤツのバックに中核派がいる噂を忘れるなよ」「こんなテレビであっさり意見変える人はそれまで」といった否定派の声も変わらず上がっている。
 番組では「(視聴率)1%で100万人が見るテレビというメディアは需要」と述べた山本氏。参院選後、「地上波からのオファーはこちらの一本だけ」とツイッターでも述べているが、これからの動きに注目したい。



本と雑誌のニュースサイト”リテラ”も取り上げており、下記タイトルをクリックすると、原記事にリンクします。
山本太郎・れいわ代表が「モーニングショー」で吠えた! 他局の排除継続に山本は「オファーはここだけ、私は放送禁止物体」




 BESTT!MESにケルトン教授の来日に際して、中野剛志先生が緊急寄稿!されました。
下記クリックすると、MMT批判論者が渦巻く日本の中で明快に論駁する中野剛志の論稿にリンクします。勝手ながら、以下に転載させて頂きます。


ケルトン教授の来日を機に、日本史からMMTを考えてみました

■MMT(現代貨幣理論)のブームが続いています。

7月16日には、MMTの提唱者のひとり・ステファニー・ケルトン教授が来日して、シンポジウムが開催されました。

 

 もっとも、日本では、相変わらず、MMTの批判の声ばかり。

 MMTは「自国通貨を発行できる政府はデフォルト(財政破綻)しないので、高インフレでない限り、財政赤字を拡大してよい」と論じています。

 もっとも、これは、単なる「事実」を語っているに過ぎません。

 通貨を発行できる政府が、自国通貨建ての国債を返済できるなんて、当たり前の「事実」です。アルゼンチンなどデフォルトの事例はありますが、それは外貨建て国債に関するものです。

 ちなみに、財務省ですらも、この「事実」を認めています。

 平成14年、財務省は、日本国債の格付けを引き下げた海外の格付け会社に対して、質問状を発出しました。そこには、こう書かれています。

(1) 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を

 想定しているのか。(※財務省HP参照

 

 MMTは、この「事実」を指摘しただけなのです。

 MMT批判者たちも、さすがに「事実」を否定するわけにもいかない。

 そこで、彼らは、まるで示し合わせたかのように、こうMMTを批判し始めました。

「いったん、財政赤字の拡大を許したら、インフレが止まらなくなる。その時、政府は、インフレを制御できなくなる。なぜなら、増税や歳出削減は、政治的に難しいからだ。それが、歴史の教訓だ!」

 みんなで口をそろえて、こう批判するものですから、「確かに、そうかもしれないな」と思った方もおられるかもしれません。

 しかし、実は、この「財政赤字を拡大したら、インフレが制御できなくなる」というのもまた、「事実」に反しているのです。

 そもそも、インフレが制御できなくなりハイパーインフレになったという事例は、戦争(第一次世界大戦後のドイツなど)、独裁政権によるデタラメな政策(ジンバブエのムガベ政権)、社会主義から資本主義への移行に伴う混乱(旧ソ連諸国)、経済制裁(現在のイランなど)など、政治的に極めて異常な事態になったレアケースに限られます。

 いずれも、「財政赤字の拡大が止まらなくなった」というのとは違います。

 また、1970年代の先進諸国における高インフレも、財政赤字の過剰な拡大というよりは、石油危機が主な原因でしょう。

 しかも、その高インフレも1980年代には収まり、それ以降、今日まで低インフレが続いています。戦後の先進諸国の中で、インフレを制御できなくなった国はありません。

 これは「事実」です。

 

 念のため、日本についても、確認しておきましょう。

 戦時中から終戦直後の日本は、確かに高インフレに苦しみました。

 しかし、その原因は、空襲により供給能力が破壊されていたことに加え、戦時中は軍事支出、戦後は復員軍人への給与、発注済みの軍需品に対する支払いや損失補償があったために、財政支出が膨張したせいです。

 要するに、高インフレの原因は、戦争という特殊事情だったということです。

 なお、1944年当時の対GNP比の政府債務残高は、204%でした。

 現在の日本の対GDP比政府債務残高は230%を超えており、1944年当時を上回っています。

 それなのに、今の日本は、1944年当時とは逆に、デフレです。

 これらの「事実」が示すのは、「政府債務残高の数値の大きさ自体は、インフレとは関係ない」ということです。

 ちなみに、この終戦後の高インフレは、ドッジ・ライン(占領軍による厳しい緊縮財政)によって収束したと言われますが、日本経済史の大家である中村隆英先生によれば、ドッジ・ラインの前に、インフレ収束の条件はすでに整っていました。

さて、高インフレは、1970年代にも、大きな問題となりました。

 この時の高インフレの主な原因は、石油危機です。

 もっとも、1970年代初頭は、田中角栄内閣が「列島改造」を掲げて公共事業費を拡大しており、インフレ気味だったのも事実です。

 そこへ石油危機が襲いかかったので、いわゆる「狂乱物価」となったわけです。

 1973年度のインフレ率は卸売物価で22.6%、消費者物価で16.1%となり、さらに1974年度には、卸売物価で20.1%、消費者物価で20.9%にまで上昇しました。

 しかし、当時の日本政府は、この高インフレをすぐに鎮静化させるのに成功しました。しかも、欧米諸国よりも早く、鎮静化してみせたのです。

 まず、日本銀行が金融引き締めを行い、次に、政府が財政支出の繰り延べを行いました。加えて、労働組合は賃上げを自粛し、企業は経営合理化に努めました。

 当時の政府は、1975年度のインフレ率(消費者物価)を15%、1976年度には一桁台にするという目標を立てていましたが、実績はそれぞれ14.2%、8.8%と、見事にクリアしたのです。

 その後は、二度目の石油危機が起きたために、1979年頃に再び高インフレとなりましたが、これもすぐに鎮静化し、それ以降、日本経済は、今日まで高インフレを経験していません。

<参考>http://www.esri.go.jp/jp/prj/sbubble/history/history_01/analysis_01_01_02.pdf

 このように、昭和の歴史の「事実」は、「日本政府には、インフレを抑制する高い能力がある」ということを示しているではありませんか!

 さらに、平成の歴史の「事実」は、「政府債務が累積し続けたけれども、財政破綻はしなかったし、インフレにもならなかった」ということを示しています。

 このようにMMTが示しているのは、徹頭徹尾、単なる「事実」なのです。

 この「事実」に基づけば、現在の日本はデフレですから、財政赤字を気にせずに、財政支出を拡大できるということになります。

 もちろん、消費増税は、必要ありません。

 国民は、無理をして苦しい生活を耐える必要はないのです。

 それどころか、貧困対策、教育、研究開発、インフラ整備など、いろんなことに国家予算を使う余地がたっぷりあるのです。

 もちろん、デフレ脱却も実現できます。

 なんと素晴らしいことでしょう。

 

 だとしたら、どうしてMMTは、こんなにも批判を浴びているのでしょうか?

 どうして、二十年間もデフレなのに、インフレが制御不能になることを心配するなどという、恥ずかしいことをやっているのでしょうか。

 それは、MMTが示した「事実」を、国民に知られては困る人たちがいるからなのです。

 いったい、それは誰なのか。

 彼らは、どうして国民が「事実」を知るのを恐れているのか。

 その謎は、『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』を読めば、明らかとなるでしょう。

 ちなみに、本書は、陰謀説の本ではありませんよ、念のため。


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